幻のゲーム「アンジェラス2」の発売を未だに待っています。

ゲーム

かつてのエニックスは……

エニックス(現・スクウェア・エニックス)といえば、なんといってもドラゴンクエストシリーズで有名なメーカーです。

しかし、かつてはパソコンをプラットホームにして、良質なアドベンチャーゲーム(AVG)を作るメーカーとして有名でした。

アドベンチャーゲームという単語は最近あまり聞かなくなりましたが、要は「話す」「聞く」「取る」「場所移動」などのコマンドを選択して、殺人事件の犯人などを追い詰めていくタイプのゲームです。

かつて……というといつ頃かと思われるかもしれませんが、80年代後半くらいのことです。

当時はPC8801SRシリーズのパソコンが全盛期で、まだグラフィック機能などはファミコンよりもパソコンのほうが優れていました。

ただし、画面スクロール機能などアクション性はファミコンのほうが上でしたが。

革命的だったゲーム「ジーザス」

今でこそ、アドベンチャーゲームはコマンド選択型が当たり前ですが、この当たり前を最初に始めたのがエニックスの「ジーザス(JESUS)」というゲームだと言われています(注:諸説あります)。

それまでのアドベンチャーゲームはパソコンのキーボードで「ハナス オトコ」などと入力しないといけないものが多数でした。

まだカタカナ入力ならマシなほうで、「talk man」などと英語で入力しないといけないゲームも多くありました。

基本的な英単語がわからないと、まったく先に進めない状態でした。

それらをボタンを押すだけでコマンドが選択できるようにした画期的なゲームが「ジーザス」です。

演出に映画的な手法が取られるなど、当時としては非常に斬新なゲームでした。

映画「エイリアン」の影響を受けているとも言われています。

人気だったのでファミコンにも移植され、パソコンでは続編も作られています。

ちなみに音楽はドラクエシリーズでおなじみのすぎやまこういち氏が担当されています。

「アンジェラス」というゲームについて

話がかなりずれましたが、このエニックスが手がけたゲームの中に「アンジェラス・悪魔の福音」というゲームがありました。

ジーザスの翌年くらいの発売でした。

ジーザスと同じく、映画的な手法が取られたゲームです。

主人公のブライアン・D・パールという新聞記者が、全身が緑色になりミイラのようになる謎の奇病を目撃したことから事件に巻き込まれることになり、イギリス、日本、ペルーを舞台に物語が繰り広げられて行きます。

この奇病が実は「呪い」であったことが途中で明らかになり、話はだんだんとオカルト的な方向に進んで行きます。

「邪教」「儀式」「生贄」などの単語が並ぶようになり、時々、主人公の過去の記憶のようなものが蘇る演出が効果的に入ります。

さらにはペルーの神秘的な雰囲気をうまく活かした演出と、すぎやまこういち氏の素晴らしい音楽により、良質なホラー映画を見ているかのような印象を受け、世界観に引き込まれていきます。

ちなみにキャラクターデザインは「ダーティペア」シリーズでお馴染みの土器手司氏が務めておられました。

ヒロインのエリスは土器手司氏特有の豊満な美女でした。

当初はPC8801SRシリーズで発売され、人気を博したこともあり、演出をより効果的に見せるために、さらに高機能だったPC9801シリーズでも発売されました。

当時、ゲームプロデューサーのインタビュー記事を読んだことがありますが、「例えば、扉を開けたら死体がこちらに倒れ込んで来るという演出で驚かせたくても、PC88ではどうしてもディスクアクセス(ロード)が入ってしまい、スローになって怖さが表せない。これがPC98ならできる」と語っておられました。

ここからが本題です。このゲームの続編は……

と、ここまで長々と書いてきましたが、実はここからが本題でして……このゲーム、多くの伏線を残したまま終わっているのですね。

明らかに続編の発売を想定しているストーリーでした。

実際「アンジェラス2・ホーリーナイト」というタイトルでPC9801シリーズから発売されることが発表され、開発中の画面が各パソコンゲーム雑誌に掲載されていました。

キャラクターデザインが土器手司氏から、「Zガンダム」などで知られる北爪宏幸氏に交代することも発表されていました。

雑誌に掲載された画面には、北爪氏がデザインしたキャラクターの顔なども出ており、ああ今度はこういう雰囲気の作品になるんだ……と、ドキドキして発売を待っていたのですが……

このゲーム、未だに発売されていません。

もう30年ほど待っているのですが、一体、いつ発売されるのでしょう?

冗談ではなく、私は未だに待っています。

私以外にも待っている人たちが世の中にはたくさんいると思います。

パソコンがこれだけ普及した今なら、エニックスブランドがあれば十分売れるはずですし、今のパソコンの機能なら、1作目と2作目を一緒に収録することも可能でしょう。

別にパソコンでなくても、プレステやスイッチでも当時以上の演出ができるはず。

実は昔、問い合わせをしたことがあります。

昔、若気の至りでエニックスのHPにあった問い合わせフォームから確認をしたことがあります。

「アンジェラス2の発売はどうなったのですか?」と。

ありがたいことに返事が来ました。

「当時の担当者がもういないので詳細はわからないが、家庭用ゲーム機のゲーム市場が拡大し、パソコンゲーム市場が縮小されたので、エニックスではパソコンゲームを発売しなくなった。アンジェラス2については、PC98ではなく、セガのメガドライブCDから発売しようという話になり、そちらでの開発を進めていたが、そのハードの売上があまりよくないので、最終的には発売中止になった」という回答をいただきました。

なぜ、そこでメガドライブCDを選んだのかな……

ちなみに「メガドライブCD」と書きましたが、「メガCD」というのが正式名称のようです。

「メガドライブ」というのは当時セガから発売されていたゲーム機です。

メガCDはそれに取り付ける周辺機器です。

当時としてはかなりの高性能機器でした。

ただし、お値段が高く(49,800円)、調べたところ、1991年12月に発売されていますが、日本では38万台しか売れなかったようです。

初代プレステの発売が1994年12月ですから、あと3年待てば、プレステで日の目を見たのではないかと思われないこともありません。

どのような経緯でメガドライブCDが選択されたのかはわかりませんが、実にタイミングが悪かったなと思います。

<2019.10.18追記>
詳しい方からご指摘をいただきました。

メガCDではなく、PCエンジンのCD-ROM2(2は正式には小文字表記で二乗の意味、CDロムロムと読む)からの発売予定が正しかったようです。

それとPCエンジン版ではエニックスではなく、アスミックからの発売になる予定だったとのことです。

エニックスの担当者が間違えていたのか、私の記憶違いなのかは昔のことなので、もはやわかりません……間違った情報を伝えてしまい申し訳ありません。

ただ、いずれにせよ、メガCDと同じく高価なハードだったので、あまり売れ行きはよくなかったようです。

私はアンジェラス2を待ち続けます。

当時の担当者や開発者はもうエニックスにいないのかもしれません。

著作権やらなんやらいろいろと問題があるのかと思いますが、雑誌に掲載されていた画面を見る限り、結構、開発自体は進んでいたと思います。

特にシナリオに関しては完成していたのではないかと。

ゲームとして発売されるのが一番望ましいのですが、それが無理なら小説などの形式でもいいので、発表されないかと一縷の望みを私はまだ持っています。

張り巡らされた伏線の謎が解かれないと、どうもすっきりしないのです。

正直言うと、ストーリーはだいぶ忘れていますけれど……

いつの日か、きっと日の目を見ることを期待して待ち続けたいと思います。

追記1・アンジェラス2のチラシ

ツイッター上でこのようなチラシを発見しました。

追記2・You Tubeにアンジェラス2の動画が

You Tubeでこのような動画を見つけました。

これを見る限り、かなり完成していたように思うのですが……

追記3・元ベーマガライターさんからの証言

元ベーマガライターで声優のパパ☆様からコメントをいただきました。

音楽は古代祐三さん担当ですが、曲は作ってないそうなので、ゲーム自体完成していたというのはなかなか…
「同級生3」もでしたが、絵師さんやシナリオライターさんともめると未発売に終わるケースが多いですね。

グラフィックやシナリオはできていたけれども、BGMなど細部はできていなかったということでしょうか。

追記4・製作関係者からの証言

当時、アンジェラス2の製作に関わっておられた方がこの記事を読んでくださり、ありがたいことに貴重な証言をいただくことができました。

匿名を条件に掲載してもいいということでした。

大変貴重な証言なので、そのまま掲載させていただきます。

当時某バイト先でグラフィックの一部を作っていました。
私の担当ではなかったので横で見ていただけですが、遠隔地で分業でやっていたので全体のまとめをどこでどうやっていたのか詳しく知りません。
データはアスミックのBBSを使ってやり取りをしていました。
Youtubeで見れる動画は当時見たことがあるグラフィックのオートデモみたいなものと同じでした。
グラフィックはそこそこあがっていて一部がデモの様な状態で動いていましたが、完全なゲーム画面として文字や音声が入ったものは見たことが無かった気がします。
ただ我々のチームがグラフィック担当だったのと、当時はエミュも無く簡単に実行できる環境が無かったからかもしれません。
CD-Rまだ無かったか、とても高価な時代の話です。
ROMROMの開発は巨大なHDD装置を使ってました。
動画で見れる以外のグラフィックも書いていたので、あの動画が100%ではないのは確かです。
その後しばらくして大人の事情で中止になったようです。
他にも色々なソフトが中止になりました。
あそこまで作ったのにもったいないねと思ったものです。
発売リストに載ればまだユーザーの記憶に残るのに、未発表だとそれもない訳で本当に残念でした。

やはり、ある程度までは完成していたようですね。

また、闇に消えたグラフィックなどもあるようです。

どこかに残っていれば、いつか日の目を見ることもあるのかもしれません。

希望は捨てずに待ちましょう。

コメント

  1. 通りすがり より:

    アンジェラス2はメガCDではなく、PCエンジンスーパーCD-ROMで発売予定でした。
    メガCDでは発表されてません。

    PCエンジン版の発売元がアスミックだった為、エニックスの担当者も自社のことではないので勘違いしたのでしょう。

  2. 荒深小五郎 荒深小五郎 より:

    >通りすがり様
    ご指摘ありがとうございます。
    改めていろいろ調べてみましたら、確かにPCエンジンでの発売が予定されていたみたいですね。
    ネット上には一部のデータも流出しているようで。
    記事の方を一部修正しておきます。
    開発中の画面を見る限り、ここまで作っておきながら、どうして発売できなかったのだろうかと今でも思います。

  3. くらやみ より:

    アンジェラス2に導かれこのサイトに。当時「いつ発売されるのか?」待っているうちに時がすぎ、もう30年ほど経ちましたね。今では完全なおじさん世代です(笑) 当時PC88で遊んでおり。JESUS・バーニングポイント・アンジェラスなど色々とやっていました。
    あの世代のゲームを出してほしいですね。
    エニックスといえば「オホーツクに消ゆ」の影響で北海道めぐりを。

  4. 荒深小五郎 荒深小五郎 より:

    くらやみ様>コメントいただきありがとうございます。
    私もアンジェラス2を待ち望んで30年ほど経ちます。
    当時のエニックスはPCでいいゲームをたくさん発売していましたよね。
    最近、ドラクエやFFばかりになっているので残念です。
    あの頃のゲームをリメイクしてくれないかなと思う今日このごろです。

  5. 匿名 より:

    一応、PCエンジンエミュで動く物はありますね。
    プロトタイプなので完全動作するかわかりませんが、起動は出来ました。

    今なら、こちらでプレーすることをお勧めします。

  6. 荒深小五郎 荒深小五郎 より:

    匿名様>そのようなものがあるとは初めて知りました。
    探してみます。
    ありがとうございます。

  7. his より:

    当時の雑誌のPCエンジンfanというものによると確か製品そのものは完成しているという話でした。
    ですがこちらもちょうどPCエンジン衰退期に当たったということで発売されなかったようです。
    せめて通販という形でも取ってくれたらという声はあったんですが。

  8. 荒深小五郎 荒深小五郎 より:

    his様>貴重な情報をありがとうございます。
    製品そのものが完成していたとすると、ますます惜しまれますね。
    きっと、どこかに原盤が残っているのでしょうが、誰かが陽を当ててくれませんかねえ。
    権利関係で難しいのでしょうけれど。

  9. よしだ より:

    自分も当時、ジーザス、スナッチャー(コナミ発のサイバーパンク。明らかに続編あると思ってました。)、アンジェラスにときめいた者です。
    クリアーしてからシアターモード?映画風にストーリーが流れていくのを観ていました。
    いまだに続編があればお金は出すのですが・・・残念です・・・

  10. 荒深小五郎 荒深小五郎 より:

    よしだ様>アンジェラス2は、ほぼ完成していただけに、余計に惜しいですよね。
    あそこまで画面を見せておいて発売しないなんてね……
    PCゲーム市場は縮小していますが、SwitchやPSでもいいので発売してほしいですね。
    今どきのゲーム機のスペックなら、1作目を同時収録しても楽勝でしょうし。
    権利関係とかで難しいのかな……

  11. 当時のパソコンゲーム誌の新作記事の画面写真見て愕然。原画がまるっきり変わっていて、「”1″と同じじゃなきゃヤダ(悲)」と嘆いた。

  12. 荒深小五郎 荒深小五郎 より:

    バルタン幻人様>確かに土器手司氏と北爪宏幸氏の絵柄はまるで違いますね。
    ふくよかな女性を描く土器手氏に対して、シャープな感じのする北爪氏という感じでしょうか。
    一体、ふたりの描かれた原画はどこに保管されているのでしょうね。
    誰か、眠りから目覚めさせてくれないものかと未だに待ち続けています。

  13. はなれ より:

    30年前に兄と「デュマの家の前にあるポスターってダーティーペアじゃない?」と盛り上がったのを思い出しました、ありがとうございます

  14. 荒深小五郎 荒深小五郎 より:

    はなれ様>いつの日か続編が発売されることをお互い待ち続けましょう。

  15. パパ☆ より:

    音楽は古代祐三さん担当ですが、曲は作ってないそうなので、ゲーム自体完成していたというのはなかなか…
    「同級生3」もでしたが、絵師さんやシナリオライターさんともめると未発売に終わるケースが多いですね。

  16. 匿名 より:

    音楽担当の古代さんによると、音楽は作ってないそうなので、完成していた…というのはちょっと懐疑的かな。
    「同級生3」もですが、絵師さんやシナリオライターさんと諍い起こすと未発売になるケースが多いですね。

  17. 荒深小五郎 荒深小五郎 より:

    パパ☆様>貴重な情報をありがとうございます。
    音楽はすぎやまこういち先生ではなく、古代祐三さんだったのですね。
    作曲まで進んでいなかったということは、システムとグラフィックが何枚かできていた程度というところでしょうか。
    シナリオ自体はできていたと思うので、小説版でも出ませんかねえ……
    同級生3も出ないなと思っていたのですが、ゴタゴタがあったのですね。
    真相はわかりませんが、期待されたゲームが内部事情で発売されないのは残念なことです。

  18. 匿名 より:

    鼻血がでるほど貴重な情報の記事を読ませていただきました。
    JESUS、そしてアンジェラス、ミスティブルーと、当時のENIXアドベンチャーは神がかっていました。
    チラシの隅に「アダルト・ホラー・アドベンチャー」とありますが、この「アダルト」は文字通り大人向けの、と言う意味なんでしょうね。
    あの当時でも、アダルトゲームだったら売上が立ったと思いますが、もうENIXは自分のブランドでそれを出したくはなかったんでしょうね。
    (イラストの北爪さんもOKしないでしょうし……

  19. 荒深小五郎 荒深小五郎 より:

    匿名様>コメントありがとうございます。
    楽しんでいただき幸いです。
    最近のエニックスは大作とその関連作ばかりでこの頃のような作品を販売してくれなくて残念ですね。
    大企業になったから冒険しにくくなったのでしょうね。

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