「リングにかけろ」および「リングにかけろ2」は「聖闘士星矢」などで知られる車田正美先生の作品です。
前者は「週刊少年ジャンプ」で、後者は「スーパージャンプ」にて連載されていました。
作中の話はつながっていて、2は前作の子世代が活躍する話となっています。
「リングにかけろ」はどんな作品?
「リングにかけろ」はボクシングを題材にした漫画です。
最終的には世界チャンピオンを目指す話です。
主人公は高嶺竜児という少年です。
ボクサーだった父が早くに亡くなりますが、母が再婚した相手がとんでもない奴だったため、姉の菊とともに家出。
最終的に東京のボクシングジムに身を寄せます。
泣き虫だった竜児ですが、父のボクシングセンスを受け継いでいた姉から、手ほどきを受け、メキメキと上達。
また、ライバルとの対決から精神的にも成長していきます。
やがて、当初はライバルだった、剣崎順、志那虎一城、香取石松、河合武士らとジュニアの国別世界大会を戦います。
彼らは「黄金の日本ジュニア」とも呼ばれます。
最後は世界チャンピオンになっていた剣崎順と対決します。
この漫画、当初は普通のボクシング漫画だったのですが、途中からパンチを受けた相手が天井まで吹っ飛ぶようになり、「聖闘士星矢」の世界に近づいて行きました。
皆が聖闘士が使うような必殺技を持つようになりました。
さらには、ボクシング界を影から操るという「影道(シャドウ)一族」が登場したり、伝説の武器、カイザーナックルが登場するなど、どんどん過激な方向へ。
ところが、この路線変更が大当たりし、単行本の売上は累計1300万部を超え、少年ジャンプの部数増大に貢献したと言われています。
後にはアニメ化やパチスロ化もされます。
「ギャラクティカファントム」とか「ジェットアッパー」なんて、必殺技の名前を聞いたことはありませんか?
では「リングにかけろ2」はどういう作品か?
2は前作の17年後の世界となっています。
主人公は剣崎麟童(けんざきりんどう)16歳。
剣崎順と高嶺菊との間に生まれた子です。
名家である剣崎家に母である菊の存在が認められなかったことや、菊を残して早逝した高嶺竜児や剣崎順に反発し、バイクを乗り回し、ストリートファイトに明け暮れる日々でした。
なお、母である菊もすでに故人となっています。
しかし、後にボクシングへの情熱に目覚め、後見人だった石松から指導を受け、やがては志那虎の息子・伊織、河合武士の甥・響(きょう)、影道の息子・嵐(らん)、双子の弟・竜童(りゅうどう)らとともに、父親たちと同様、世界のジュニアたちと戦うことになります。
もちろん、必殺技などは健在です。
「リングにかけろ2」のどのあたりが名作なのか?
「ヤムチャ化現象」がなかった。
少年ジャンプの漫画には、ファンを怒らせる悪いパターンがあります。
新キャラを目立たせるために過去の人気キャラを簡単に倒してしまうようなパターンです。
「強さのインフレ」とか、「ヤムチャ化現象」などと、人によって呼び方は様々ですが、往年のファンをがっかりさせてしまいます。
同じ車田正美作品である「聖闘士星矢」でも、黄金聖闘士が新キャラに簡単に倒されるということがあり、この呪縛から逃れられませんでした。
ところが、この作品には、ほぼ、そのようなシーンがありません。
それどころか、前作に登場した人物たちに新キャラたちが圧倒されるようなことが多々ありました。
主人公の麟童からして、ストリートファイトでは無敵を誇っているのに、石松相手には当初、一発のパンチも当てることができませんでした。
イタリアジュニアの刺客が石松を倒しに現れますが、父親の必殺技には遠く及ばないと言われ、簡単にあしらわれます。
フランスジュニアの選手が河合武士の威圧感に圧倒されるシーンもありました。
これはジャンプ漫画として、珍しい例ではないでしょうか?
死んだ人間が生き返らない
死んだ人間が生き返らないのは当たり前のことですが、少年ジャンプの漫画には多々あることです。
「ドラゴンボール」などは典型ですし、「男塾」に至っては、もはやギャグと言っていいほどです。
男塾の場合は、完全に死んではいなかったことになっているみたいですが……
しかし、この漫画ではそのような描写はありませんでした。
前作で激しい戦いから身体がボロボロになっていた石松は、麟童から初めてパンチを当てられ、満足して死んで行きます。
同じように身体がボロボロだった志那虎は自刃して死にます。
麟童の仲間だった響は、心臓に持病を抱えていて、戦いのあと死んでしまいます。
彼らはいずれも生き返ることがありませんでした。
当たり前のことなんですが、人気キャラを惜しげもなく殺していく車田正美先生に何か凄みを感じました。
コンプライアンスにひっかかる?
このように素晴らしい作品なのですが、今後、アニメ化されたり、大々的に持ち上げられることは期待薄です。
たぶん、最近何かとうるさいコンプライアンス問題に引っかかるからです。
ドイツジュニアは完全にナチスと同じような組織ですし、アメリカジュニアには白人至上主義者がいて、黒人の同僚をバカにしています。
イタリアジュニアはマフィアですし、たとえアニメ化されても地上波で放送するのは無理でしょうね。
これだけ面白い漫画が実に残念なことです。
それだけに記事タイトルには「隠れた名作」と書かせていただきました。
しかしながら、漫画は今も販売されていますし、どちらの作品も多くの方に読んでもらいたいですね。
ジャンプ漫画の法則を崩してはいますが、王道の「勇気」「友情」「努力」は外されていません。
熱い漫画であるのは確かです。
どちらから読んでも楽しめますが、やはり「リングにかけろ」から読む方は、「リングにかけろ2」を読んだときにニヤリとできると思います。
コメント