かつて「美少女ゲーム」という言葉を作った「テクノポリス」という雑誌がありました。

ゲーム

『テクノポリス』というパソコンゲーム雑誌が昔、存在していました。

Wikipediaで調べたところ、1982年から1994年までの発売だったようです。

発売元は徳間書店です。

私が読んでいたのは(正確に言うと友人から借りて読んでいたのは)、大体、1990年前後になります。

当時、友人たちと各パソコン誌(ベーマガ、ログイン、コンプティーク、ポプコムなど)を分担して買って、貸し借りをしていました。

ちなみに、私の担当はログインでした。

このテクノポリス、初期の頃は硬派なパソコン雑誌で、最新のパソコン情報やプログラミング技術について、取り上げられていました。

当時、まだパソコンはかなりの高級品で、所有者はマシン語などを使える人が多く、ゲームを自分で作るような人たちでした。

ただ、この雑誌はCGについて早くから注目していて、読者がアニメキャラなどをCGで描いて、投稿するということがありました。

これが後の路線につながるのですが、その件については後述します。

ゲームの時代

1980年代中頃から、ファミコンの登場で、ゲームの時代がやってきました。

パソコンの世界においてもゲームがたくさん作成されるようになり、この雑誌もゲームを紹介する方向に舵を切るようになりました。

当時は「光栄」「日本ファルコム」「T&Eソフト」「エニックス」などのメーカーに勢いがありました。

エニックスは「ポートピア連続殺人事件」や「ドラクエ」シリーズでファミコンの世界にそれまでなかったジャンルのゲームを送り込んで来ましたが、元々、パソコンゲームの世界で、そのようなジャンルのゲームを作っていました。

「北斗の拳」のゲームも作っていましたね。

一方、ファミコンが子供向けだったのに対して、パソコンは高価であったため、大人向けということで、いわゆるちょっとエッチな……いや、結構過激だったかな……というジャンルのゲームが結構ありました。

光栄やエニックスも当初はそんなジャンルのゲームを作っていました。

これらのアダルト系ゲームを「美少女ゲーム」と名付けたのが、このテクノポリスという雑誌なんですね。

美少女ゲームの時代

現在の定義では「美少女ゲーム」と「エロゲー」は別物であるようです。

大人向けのシーンがあるかないかで区別されるようですが、当時は混同されていましたね。

テクノポリスでは大人向けシーンのないゲームも取り扱っていましたし、CGの投稿コンテストなどはありました。

漫画が掲載されていたり、読者の投稿コーナーも盛り上がっていたり、表紙が人気イラストレーターのいのまたむつみ氏だったりして、その絵が目的で購入していた人も多々いたした。

しかし、やはり、一番の目的は大人向けシーンのあるゲームの画像見たさだったと思います。

当時のパソコンのスペックで描かれるグラフィックですから、ドットも荒かったし、色数の制限もありました。

今見ると、こんな絵に興奮していたのか……と思うこともありますが、当時は制限がある中、性能を使い尽くした技術者たちの情熱を感じました。

しかし、ある事件がこの雑誌の運命を狂わせました。

美少女ゲームメーカーの摘発

※詳しくはWikipediaにて「沙織事件」というキーワードワードで検索してみてください。

1991年、とある未成年の少年が美少女ゲームを万引きして逮捕されました。

ところが、その際に盗まれたゲームを警察が調べたところ、かなり過激な内容で、摘発に値すると判断されました。

余談ですが、警察がその手のゲームがあることを知らなかったはずがなく、この万引き事件を利用して摘発したのだと当時マニアの間では言われていました。

いわゆるヘアヌードの類が世間の話題となりはじめた頃で、さらに人気絶頂だった宮沢りえがヌード写真集を発売したことで大騒ぎとなっていました。

宮沢りえのヌードは芸術的な扱いを受けていました。

警察側としてはブレーキをかけたいが、そちらの方を摘発すると、マスコミなどの反発を受けるかもしれない……そこで、擁護されることがまずない美少女ゲームやコミックの類が狙われたのではないか……という陰謀論です。

真相はもちろんわかりません。

しかし、前例がないわけではありません。

AVの帝王村西とおる氏は、若い頃、裏本、ビニ本を扱う書店を経営していましたが、ある日店の売上金が盗まれたので警察に被害届を出したら、現場確認の際に裏本が見つかり、逮捕されることになりました。

村西氏は警察署の近くでも支店を出し、販売していたので警察が知らないわけがなく、やられたと思ったそうです。

話が少し逸れましたが、一部メーカーの幹部が摘発されたこともあって騒ぎとなり、業界団体が設立され、統一ルールが作られるようになりました。

結果、極めて表現がおとなしくなりました。

友人たちと「テクノポリス廃刊の危機だな」と話していたのを今でも覚えています。

ちなみに、後に「エヴァンゲリオン」で世間に認知されるガイナックス社も、当時美少女ゲームを作っていましたが、宮崎県から有害指定を受けています。

それについて、ガイナックス社は「このゲームのどこがいけないのですか?」という意見広告をゲーム雑誌各誌に掲載しています。

そして、テクノポリスは廃刊へ……

テクノポリス誌も路線変更が余儀なくされ、やがて、美少女ゲームそのものを取り上げることがなくなりました。

美少女ゲームの表現は昔よりおとなしくなったものの、ジャンルとしてはまだ勢いがありました。

しかし、それらのゲームばかりを取り上げた専門誌が次から次へと発行され、テクノポリスのスタッフも一部そちらへ流れたようです。

そして、1994年テクノポリスはひっそりとその歴史を終えることになりました。

テクノポリスだけでなく、Windows95とインターネットの普及により、ゲームの攻略情報などがタイムリーに手に入れられる時代が来ました。

少し遅れて「マイコンベーシックマガジン」や「ログイン」といったパソコンゲーム雑誌そのものが休刊されました。

今残っているのは「コンプティーク」くらいですかね。

もっとも、もはやパソコンゲーム雑誌と言っていいのかわからないような雑誌となっていますが。

ちなみにコンプティークの発行人であるカドカワの重役はログインの元編集者です。

最後に

今や小学生でもネットで少し検索すれば、エロ動画が見られる時代です。

うらやましくもありますが、後ろめたい気持ちがありながらも、雑誌をドキドキしながら開いていたあの興奮を味わえないのはかわいそうな気もします。

何でも簡単に手に入るって、ある意味、楽しみが少ないようにも見えます。

まあ、当時はゲームに関しての情報が少なくて、ハズレをつかまされることも多々ありましたが……

最近はエロゲーというジャンル自体が少なくなっているようですね。

二次元好きな人たちによって、支えられているという現状でしょうか。

というより、パソコンゲーム自体が一部のオンラインゲームばかりになって、少なくなっています。

なんというか、あの頃の興奮をもう一度味わいたいなと思う、今日この頃です。

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