「ランペルール」はフランス語で「皇帝」という意味ですが、同名タイトルのゲームが1990年に光栄(現・コーエーテクモ)から発売されています。
当初PC8801SRシリーズで発売され、後にはファミコンやWindowsにも移植されました。
当時としては画期的なシステムもあり、現在も続編が期待されるゲームです。
どのようなところが素晴らしかったのかを以下に述べます。
ランペルールはどんなゲーム?
昔の信長の野望や三国志と同じく上から見下ろした形の2次元視点でプレイするシミュレーションゲームです。
プレイヤーはナポレオン=ボナパルトとなり、最終的には欧州の完全平定(全46都市の征服)を目指します。
そのためには内政、外交などに励んで国力を豊かにし、兵士を増やし、訓練しなければなりません。
戦闘モードになれば、これまた上から見下ろした形で、六角形のマスで構成された戦場で部隊を移動させて戦うことになります。
当時画期的だったシステムやゲームの特徴
地位によって選べるコマンドが違う
このゲームは4つのシナリオと隠しシナリオ1つから構成されています。
それぞれ、ナポレオンの経歴に合わせたスタートとなるのですが、例えば、シナリオ1ではナポレオンはイタリア方面司令官でしかないため、行動に制限があります。
せっかくいくつかの都市を征服して、相手国家を倒す直前まで行っても、フランス本国の政治家たちが和平条約を結んでしまい、それ以上攻めることができないなんて歯がゆい思いをすることが多々ありました。
捕まえた捕虜を解放されてしまうなんてこともありますし、資金や兵士が不足したら陳情をして、本国から送ってもらわねばなりません。
特定の条件をクリアすると、最高司令官、第一執政、皇帝と地位が上がり、自由度が高まって行き、選べるコマンドが増えます。
皇帝になると、兄弟4人と養子1人を自分の分身のように使えるようになります。
ただし、彼らの能力値は軒並み低いです。
シナリオ2では最高司令官としてスタート、シナリオ3は第一執政、シナリオ4は皇帝としてスタートできます。
しかし、シナリオ1からスタートする方が自分に有利な形を作って皇帝になれるので、そちらからのプレイのほうが最終的には楽でした。
シナリオ5は隠れシナリオで、皇帝の地位を追われたナポレオンが幽閉先だったエルバ島を脱出し、巻き返すところからのスタートとなります。
しかし、有能な部下たちがすでにおらず、まわりは敵だらけというかなり難易度の高いシナリオとなっています。
戦闘モードにおいて、高低差の概念があった
戦闘モードにおいて、高低差の概念が取り入れられていました。
例えば、平地から山向こうの敵部隊に大砲を打ち込もうにも山が邪魔をして届きません。
山から川の中に入ることは隣接していても不可能だったり、兵種によっては侵入しづらい地形もありました。
それまでのSLGでは山や森の中に入れば防御力が上がるという概念こそありましたが、高低差が取り入れられたのはこのゲームが初めてだったのでは?
各兵種に特徴があった
兵種によって使えるコマンドも違いました。
歩兵部隊は橋を破壊したり、逆に建設するなんてことができましたし、人数が不足すると予備兵を投入することもできました。
騎兵部隊は移動力に優れているのはもちろんのこと、突撃というコマンドで相手を一気に蹴散らすことができました(しかし、相手が強いと逆にこちらが混乱することもありました)。
砲兵部隊は移動に難があったり、雨や雪の日は撃てないということもありましたが、遠距離射撃ができ、相手を混乱させることに長けていました。
橋をかけることで、その場所に砲兵を置いて射撃するポイントを増やすなんて戦術を取り入れることができました。
凍っている川の上にいる部隊に大砲を撃つと、氷が割れて部隊が大打撃なんてこともできました。
一方、能力値が低い将軍に砲兵部隊を率いさせると誤射して、味方に当たるなんてことも……
実際にナポレオンが得意とした、大砲で相手部隊を混乱させた上で歩兵部隊で兵士数を削り、最後は騎兵隊の突撃で相手を蹴散らすという戦法が有効に使えます。
各将軍によって得意な兵種が違い、部隊編成を考えるのもひとつの楽しみでした。
各キャラの能力値が上がる
各キャラにはAからDの4段階で能力値が付されているのですが、経験を積むことで能力値が上がります。
例えばナポレオンは歩兵と砲兵については当初から能力値Aなのですが、騎兵に関しては能力値Cからのスタートとなっています。
これが戦いを続けて行くうちにBやAに上がって行くことがあります。
軍事的な経験だけでなく、内政コマンドについても、補給や捕虜交換などを行うことで経験値が増えて行きます。
経験値が100になるとどの数値かがランダムで上がる模様です。
各都市によって特性があった
各都市には人口の他に、商業・工業・農業の数値があります。
商業と農業はわかりやすいかと思いますが、工業の数値がポイントで、この数字が高いと船の生産や大砲の生産が効率よく進みます。
イギリスは工業の数値は高いものの農業の数値が低く、フランスはその逆となっています。
貿易の概念があり、食糧や物資が不足した場合、他国から購入することができます。
そのためには友好国を作っておかねばならず、外交も重要なポイントとなっています。
ランペルールでは外交がかなり重要
このゲームはそれまでのSLGと比べて、外交がかなり重要となっています。
同盟を結ぶ、破棄するという程度ではなく、そもそもどちらかの国が宣戦布告をしないと相手国に攻めることができません。
同盟を結んでいた場合、まず破棄をして、そのあと宣戦布告することになります。
また、宣戦布告や講和によって、各キャラの忠誠度が上下することもありました。
勇ましい将軍は宣戦布告によって忠誠度が上がりますが、内政を得意とする政治家キャラは下がるなんてことが。
忠誠度の低いキャラは亡命したり、戦場から離脱することもありました。
捕虜交換も重要なポイントでした。
なお、敵国でなければ貿易をすることができるのですが、物資や食糧のやり取りをする際、食糧の余っている国に売りつけようにもうまくいかずというようなことがあります。
実際の歴史のようにイギリスを苦しめるために農業国であるロシアと同盟を結び、食糧を買い付けておくとイギリスは兵士数を維持できなくなる「大陸封鎖令」のような戦術を取ることもできます。
制海権という概念があった
海戦を実際することはないのですが、海に面した都市は船を所持することができ、船を持っている数により、制海権を握ることができます。
これを握られると敵国に攻め込む際、上陸に失敗したり、上陸後撤退できなかったり、補給を邪魔されたりというような面倒ごとが起こります。
工業国であるイギリスは大量の船を所持しているため、各地で制海権を持っています。
イギリスには史実でフランス海軍を撃退した有名なネルソン提督がおり、イギリスに攻め込もうとすると最初は高い確率で撃退されてしまいます(その際にネルソンは戦死しますが)。
ランペルール、その他のイベント
ロゼッタストーン発見
史実と同様、とある条件を充たすとエジプト遠征のイベントが起こり、発見してフランスへ戻ると第一執政に昇格する結果となります。
ナポレオンの結婚と離婚
最初の妻ジョゼフィーヌと離婚し、その後2番目の妻マリー・ルイーズと結婚するイベントが起こります。
離婚までにクリアするとエンディングの馬車のシーンで隣に座るのがジョゼフィーヌとなり、それ以降だとマリー・ルイーズとなります。
タイミングによっては誰もいない場合もあるようです。
ゲリラやコサックの登場
スペインに攻め込むと定期的にゲリラ活動に遭って苦しめられます。
ロシアに攻め込むとコサックが定期的に暴れ、苦しめられます。
どちらも数ヶ月に1回起こるイベントで、強制的に兵士数などが減らされます。
ちなみに、彼らが現れるだけでなく、スペインは山地、ロシアは湿地帯で、フランス軍は起動力を奪われ、かなり苦戦します。
このあたりは史実を忠実に反映しています。
ロシアは焦土作戦も取るので、フランス軍は補給にも苦しみます。
ランペルールのちょっと残念だったところ
どんなゲームでもそうですが、気になるところもいくつかあります。
まずは、月1回しか行動コマンドが使えなかった点でしょうか。
皇帝になってからは兄弟4人と養子1人を分身にして、月1回コマンドが選択できるので月あたり6回の行動ができるのですが、それまでは1回しかできません。
「信長の野望」のように全都市でコマンド選択できて、後方の都市は委任できるようなシステムだったら良かったなと。
というのは、せっかくたくさんのキャラがいるのに活かせないからもったいないなと思うからです。
とはいえ、絶妙のゲームバランスなので、大きな不満というわけではないのですが。
最後にひとこと
傑作と言っても過言でないゲームなので、続編が出ていないのが残念です。
今のPCやコンシュマー機のスペックなら、もっと多彩なことができると思うのですがね。
BGMもなかなか良かったですよ。
フロッピーでプレイした世代ですが、ディスクの読み込み時間も気になるほどではなかったですね。
いまいち知名度が低いのは、おそらく日本の戦国時代や三国志の時代と比べて、登場人物の知名度が低いからでしょうね。
ナポレオンは超有名ですし、ウエリントン、メッテルニヒ、タレイランあたりは歴史の教科書にも載っている人物なので、多少は知られているかもしれません。
しかし、ナポレオン麾下でも有能で知られたダヴーやランヌ、ミュラ、スルト、ネイらという将軍でも、ある程度歴史好きでないと知らないと思います。
ナポレオンを主人公にした漫画作品などがあるので、もっとこの時代を知ってもらえると続編が作られる可能性がありますかね。
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