「ゼロ THE MAN OF THE CREATION」は愛英史原作、里見桂作画の漫画です。
1990年から2011年までスーパージャンプで連載されていました。
単行本は全78巻発売されています。
「ゼロ」の主人公は何者?
主人公はゼロと名乗る男性。
年齢不詳、国籍も素性も誰も知らないと言われています(初期のエピソードにて、陶芸家の息子で、榊零という名前が出てはいますが……)。
職業は贋作家です。
美術品から、料理、人間まで、あらゆるものを作ります。
贋作家と書きましたが、彼の作るものは決して偽物というわけではありません。
彼は本物をもうひとつ作るのです。
優れたプロファイリング能力により、彼は作者の魂や境遇に触れることで、まったく同じ物を作ります。
現在の鑑定技術では彼の手によって作られた物は、真贋の判定ができません。
もうひとつの本物なのですから、当たり前というわけです。
それゆえ、「神の手を持つ男」と言われています。
ゼロの口癖のひとつに「本物はひとつでいい」というセリフがあります。
ゼロはそう語り、本来の”本物”を壊したり、燃やしたりします。
ゼロはもうひとつの特殊能力として、一度記憶したものは絶対に忘れないという恐ろしい記憶力を持ちます。
一瞬見ただけで、目の前にあった風景から美術品の姿かたちを記憶します。
また、目隠しをされて車で誘拐をされるシーンでは、ブレーキを踏んだ回数や進んだ距離などを記憶して、誘拐された場所に再びたどり着くこともありました。
経歴は明らかではないのですが、少年時代にアメリカにて、各分野の大学教授を論破したのがゼロではないかとも言われています。
作品中「なぜ贋作家の道を選んだのか?」と聞かれ、「本物が見えてくるからです」と答えています。
「ゼロ」とは、どんな作品?
基本的にほぼ一話完結型の漫画です。
毎回、誰かがゼロに依頼をする形で始まることが多いです。
美術作品の修復であったり、何かの謎を解くために力を貸してほしいというものが多いです。
依頼の目的は様々で、正義のためもあれば、ゼロをだまして一儲けしようなんて連中もいます。
このような特殊能力を持つ主人公ですから、彼の能力に目を付けた裏世界の人間や、美術商らに狙われています。
ゼロを拘束したり、だまそうとする人間がたくさん現れます。
彼らは例外なく、返り討ちにあいます。
また、各国の警察にもマークされていて、美術商などと手を組んで、偽物を作った罪で逮捕を企む刑事なども現れます。
しかし、彼らも例外なく返り討ちにあいます。
ただ、ゼロもひとりでいるところを不意打ちにあって拘束されるなど、警戒心が薄いところもあります。
ゼロは金持ちからは、報酬として全財産を要求するなど、苛烈なところもあります。
スイス銀行にオールゼロの口座を持っていて、そこに振り込ませます。
そのためか、世界中に邸宅を持っています。
反面、貧しい人間からは出世払いでいい、というような人情味のあるところを見せます。
とある少女の純真で美しい目を見ただけで、「いいものを見せてもらった」と言って、無償で協力したこともあります。
知識が蓄えられる漫画
様々な依頼をゼロが受けるわけですが、主に美術品と歴史に関するテーマが多いです。
ゼロは依頼を受けて、例えば美術品が作られた経緯や、作者のことを調べたり、思い出したりするわけですが、これが非常に勉強になります。
特に歴史や伝記マニアにはたまらない内容です。
たまにオカルト的なことや、実在人物の名前を変えていることもあり、まるごと信じるのは危険なのですが、学ぶきっかけにはなります。
ゼロに対する私的感想
知り合いから教えてもらって、読み始めた漫画なのですが、気づいたら全巻を集めるほどになっていました。
歴史や芸術に関する知的好奇心が充たされる漫画です。
ただ、初期に比べると、後期はネタ切れを感じることもあり、物足りないな……と思う回もありました。
また、主人公ゼロは、初期の頃は多少怪しい雰囲気を漂わせ、「ヒューマニズムは嫌いだ」と言っているような人間でしたが、後期は完全に人助けばかりをする人情家になっていました。
初期の頃は、マフィアを使って、相手を脅すようなことをしていましたからね……
後期は、優等生になってしまったとでもいうか……登場人物たちが、ゼロに助けてもらって「すべてあなたはお見通しだったのですね。ありがとうございました」と感謝するようなきれいな展開ばかりになってしまい、初期の頃を読んでいる人間としては「違うな……」と思うこともありました。
謎の質も落ちてしまったような……
とはいえ、後期も美術や歴史に関するウンチクはたくさん覚えられますし、読んでいて勉強になる漫画でもあります。
そういった分野に興味がある人には、ぜひ読んでいただきたいですね。
芸術について、一端の知識をつけることができますよ。
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