銀英伝最大の嫌われ者はやはりフォーク准将ですよね。

漫画・アニメ

はじめに

田中芳樹氏のベストセラー小説、銀河英雄伝説。
略して銀英伝。
説明不要な超有名作品です。


この作品には600人ほどの人物が登場し、それぞれ、一癖ある人物ばかりです。
どの登場人物が一番好きか? という投票をすれば、おそらく票がかなり割れるかと思われます。
しかし、どの登場人物が一番嫌いか? という投票をすれば、おそらく、ダントツで1位を獲得するのではないかと思われる人物がいます。
それが、これから紹介するアンドリュー・フォーク准将です。

アンドリュー・フォーク准将とは?

自由惑星同盟の陣営に属する人物です。
初登場時26歳という年齢ですが、歳よりやや老けて見え、血色が悪く肉付きの薄い顔と表現されています。


石黒版
意地の悪そうな人相です。

藤崎版
こちらは特に陰険そうに書かれていますね。

リメイク版(ノイエ版)
こちらは一見、美形に描かれていますが、普通に見える人間が一番怖いという表現ですかね。

士官学校を首席で卒業した秀才でもあります。
ロボス元帥という、かつては優秀だったという、過去形で能力を語られる人物に気に入られ、出世したとされています。
得意とするのは弁舌で、相手を言い負かすことに長けています。
また、軍人として最高位の地位を狙う野心家でもあります。
しかし、戦略的、戦術的な能力は皆無と言ってよく、要は口だけ達者な人物という見方が妥当です。

フォーク准将は、なぜ、嫌われるのか?

詳細は後述しますが、彼は自分の野心を満たすために無謀な戦を提案し、参謀のひとりとして居座ります。
しかし、無能な彼の作戦は行き当たりばったりで、大惨敗を食らう結果となります。
非常に大きな損害となり、これ以降、自由惑星同盟は国力が衰退しました。
ある意味、自由惑星同盟という存在そのものを崩壊させた人物とも言えます。
しかし、何より、嫌われるのは主人公格の人気キャラ、ヤン・ウェンリーの暗殺に絡んだことでしょう。
ヤンにとって、まさにこの男は厄病神でした。

その悪行の数々について

では、その所業、悪業の数々について詳細を説明します。

無謀な作戦案を持ち込む

ヤンの活躍により、イゼルローン要塞を帝国から奪った自由惑星同盟は、帝国に対し、外交的、軍事的に有利な立場となりました。
当時の同盟は、徴兵によって社会インフラに回す人材が不足しており、国力に翳りが見えていました。
イゼルローン要塞を奪ったことで、帝国と講和条約でも結ぶことができれば、社会インフラに人材を回すことができました。
国力増強と、束の間かもしれませんが、平和な時代が訪れた可能性がありました。
しかし、そこまで考えて作戦を成功させたヤンの計画を無茶苦茶にしたのが、このフォーク准将です。
勝手にヤンをライバル視し、「今こそ、帝国領に攻め入り、民主主義の素晴らしさを教えましょう」、「圧政に苦しむ帝国の市民を解放しよう」などと美辞麗句を並べ、作戦案を持ち込みました。
作戦を成功させ、ヤンのようにヒーローになりたかったのです。
ヤンを妬んでいた上、このままでは軍人としての最高位をヤンに奪われると焦っていたようです。
おりしも、運の悪いことに、当時、同盟の最高評議会は支持率が落ちていました。
次の選挙に勝つためには、軍事的な成功が有効ということで、議員たちは一部の人物を除き、フォーク准将の計画に乗ることにしました。

口先だけで議論に勝つ

帝国領への侵攻作戦が決まったことで、軍議が開かれますが、ここでの振る舞いがフォーク准将の最も輝かしい瞬間でした。
そもそも、作戦自体が曖昧なもので、「目的はどこにあるのか?」という質問を受けても、「大軍をもって帝国領土の奥深くへと侵攻する。それだけで、帝国人の心胆を寒からしめることができましょう」などと語ります。
「では、示威行為を行うのが目的なのか?」と聞かれると、「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになろうかと思います」というよくわからない名言(?)を吐きます。
これについては、ビュコック提督に「行き当たりばったりということではないのか」と酷評されます。
ヤンが「侵攻作戦の時期を今にした理由は?」「今こそが好機だと言いたいのか?」と問いかけると……
「攻勢ではありません!大攻勢です!」
「イゼルローンを橋頭保とし、ここから帝国領の奥深くへと侵攻する!さすれば帝国軍は狼狽し、成す所を知らないでしょう!」
「同盟軍の空前の大艦隊が長蛇の列を成し、自由惑星同盟正義の旗を掲げて進む所、勝利以外の何物もあり得ないのです!」
と、もはや自己陶酔の限りとしか言えないようなセリフを連発。
それでも、補給のことや戦術的なことでヤンが反論すると、臆病者呼ばわりする始末。
このあたり、アニメや漫画、小説などで若干表現が異なるのですが、いずれにせよ、自己の能力を過大評価したフォーク准将の綺麗事を並べた演説が繰り広げられます。
とにかく、相手を言い負かして、黙らせれば、自分の意見が正しいという思考の持ち主であるようです。
多くの提督がシラケる中、行き当たりばったりの作戦は実行されることになるのでした。

作戦開始……解放軍のはずが略奪者へ

同盟軍の侵攻作戦に対し、ラインハルト率いる帝国軍は焦土作戦を実行しました。
そうとは気づかず、占領範囲を広めていくフォーク准将。
しかし、占領範囲が広まるにつれて、供与する物資が足りなくなります。
しかも、補給部隊がキルヒアイスの部隊により捕縛されてしまい、民衆への供与どころか、軍そのものの物資が足りなくなります。
すると、何を思ったか、フォークは「各部隊の判断により、現地において調達せよ」と指示。
つまり、暗に「略奪をせよ」と言ったわけですね。
結果、解放軍であるはずの同盟軍が物資略奪を働く存在となってしまいます。

ビュコックからの叱責……フォーク退場

事を重く見たヤンは今こそ撤退すべきと判断。
複数の提督と相談し、ビュコック提督から総司令官であるロボス元帥に進言してもらうことにします。
しかし、通信に出たのは、またしてもフォーク准将。
「作戦参謀ごときがでしゃばるな!」と言われても、「どのような高い地位の方でも総司令官への通信は私を通していただきます。通信を切ってもよろしいのですか?」と不遜な態度。
それでもなんとか自分を抑え、撤退を語るビュコック提督に対し、「ヤンならともかく、勇敢なビュコック提督がそのような弱気とは」と嘲笑。
ついにブチ切れたビュコック提督は……
「それなら変わってやるから前線に来い!」
「安全な場所から偉そうなことを言うな!」
「貴官は自己の才能を示すのに弁舌ではなく、実績をもってすべきだろう」
「他人に命令するようなことが自分にはできるかどうか、やってみたらどうだ!」
と畳み掛けます。
このとき、不遜だったフォーク准将に異変が。
突然わめき出し、卒倒したのです。
ビュコック提督も何事かと困惑しましたが、現れた軍医によると、転換性ヒステリーという病気(実在する病気です)で、一時的に目が見えなくなる症状が出たということでした。

※リメイク版(ノイエ版)で症状が出た瞬間のフォーク准将の姿です。

これはわがままいっぱいに育った子供などに見られる症状だそうです。
治すには彼に謝り、彼を褒め称えるしかないようですが、そんなことをする人間は現れませんでした。
「チョコレートを欲しがって泣きわめく子供と同じようなレベルの人間が3000万人の軍師を務めていたとは……」ビュコック提督を嘆かせます。
フォーク准将は病院送りとなり、表舞台から姿を消しました。

同盟軍、大損害を被る

このあと、ラインハルト率いる帝国軍の反撃が始まります。
物資不足から士気も低下していた上、各地に分散していた同盟軍は各個撃破される形となります。
一刻も早くイゼルローン要塞に撤退したかった同盟諸将ですが、ロボス元帥はアムリッツァ聖域に残存部隊を集結させます。
ここで、なんとかヤンやビュコックの奮戦によって、撤退を実現しますが、それでも受けた損害は甚大でした。
同盟軍は作戦に参加した3000万人のうち2000万人が戦死か捕虜、行方不明に。
これは同盟全体の総兵力の4割に当たる数でした。
20万隻あった艦艇は8割を失い、7個艦隊分の戦力を喪失。
さらには、ウランフ、ボロディンといった優秀な提督も失います。
戦後は、ヤンの理解者でもあったシトレ元帥が責任を取り、退役。
補給の名人でもありヤンの先輩でもあった良き理解者キャゼルヌ、総参謀長だったグリーンヒルなど、優秀な人材が左遷されます。
さらには最高評議会議員たちの辞職は当然として、結果的に野心家のトリューニヒトが最高評議会議長の地位を手に入れることになります。
同盟の国力はますます落ちるのでした。

クブルスリー本部長暗殺未遂事件

表舞台から消えたフォーク准将でしたが、あるとき病院を抜け出し、当時、統合作戦本部長だったクブルスリーに軍への復帰を願い出ます。
それも、本部ビルの前で突然声をかけるという無礼な方法でした。
復帰を懇願するフォークに対し、「それなら正式な手続きをしなさい」と諭すクブルスリー。
「それでは時間がかかりすぎます」と力説するフォーク。
しかし、良識人であるクブルスリーは「君は何か勘違いしていないかね? 私の役目はルールを破らせることではなく、守らせることにあるのだよ」と落ち着いて対応をします。
すると、突然、興奮したフォークは銃を抜き、クブルスリーを狙撃するのでした。
このとき、フォークはクーデターによって誕生した救国軍事戦線にメンバー入りしており、クブルスリーの暗殺を目論んでいたとも言われています。
命までは奪えなかったものの、クブルスリーの後釜に座ったのが、これまた無能で有名だったドーソンであったため、ますます同盟は弱体化していきます。

ヤン・ウェンリー暗殺事件

これまでの行いだけでも相当なものですが、神(作者)はさらにフォークが嫌われ者になる役目を与えるのでした。
ある意味、これが一番嫌われ者になる理由かもしれません。
それはヤンの暗殺計画に加担したことでした。
帝国が同盟を滅ぼし、ヤンの部隊だけが、イゼルローン要塞に立てこもり、戦いが繰り広げられていました。
その頃、フォークの入院する精神病院で火事が起こります。
フォークは死亡者リストに載っていたのですが、実は地球教徒らによって、密かに脱出させられていたのでした。
地球教の大主教によって、ヤンを妬む心をさらに刺激され、洗脳させられたフォークは、ヤン暗殺を実行しようとします。
イゼルローン回廊での戦いのあと、ヤンはラインハルトとの会談のため、巡航艦一隻でラインハルトの元に向かおうとします。
このとき、商船団に化けたフォーク率いる部隊がヤンの船に襲いかかろうとします。
しかし、フォークの人生もここまで。
フォークの率いる部隊はあくまでヤン暗殺を成功させるための囮で、帝国軍に化けた地球教徒たちに撃墜されます。
嫌われ者の悪役にふさわしい惨めな最後でした。
しかし、この帝国軍に化けた地球教徒たちが命の恩人のふりをして、ヤンのいる巡航艦に乗り込み、それによって、ヤンをはじめ数人が暗殺されます。

フォーク准将の人物像について

同じ士官学校首席卒でもラインハルトとは比べ物にならない無能です。
プライドだけは異常に高いですが、それに見合った能力は持ち合わせていません。
嫉妬心が強く、非常に陰険。
ヤンの功績を妬み、自分の出世欲のため、多くの人間が死ぬことになりました。
口だけは達者でしたが、中身はまるでないものでした。
先述したように、相手をその場で言い負かせればそれでいいというレベルの弁舌能力です。
相手が反論できなくなったら、自分が正しいから言い返せないんだと思い込むタイプなのでしょう。
そして、極め付きは相手に叱責されるとヒステリーを起こすというオチ。
チョコレートを欲しがる子供と同じレベルのメンタリティの持ち主でしかありませんでした。

フォーク准将を擁護できるか?

はっきり言って、まったくいいところのないフォーク准将ですが、あえて擁護するなら、士官学校を首席卒業したように秀才だったことでしょう。
「答えのあるような問題ならうまく解ける」と、ヤンの幕僚パトリチェフに言わせています。
平和な時代なら、優秀な事務官僚にでもなれたかもしれません。
また、ロボス元帥に気に入られたように、口が達者で、権力者に取り入るのが上手だったとも言えます。
最高評議会にまで作戦案を持ち込ませた能力は評価するべきなのかもしれません。
それと、結果的に彼によって、同盟が滅びるのが早くなったため、ラインハルトによる新銀河帝国の宇宙統一が早まりました。
オーベルシュタイン風に考えれば、そのことによって、より多くの命が失われるのを防げたのかもしれません。
帝国250億の民は彼が敵陣営に生まれたことを喜ぶべきなのかもしれません。

フォーク准将のモデルは?

作者はひとりのキャラクターを作る際に複数の人物をミックスするようですが、何人か考えられる人物を挙げると……
まずは、作者の好きな中国史に登場する人物、趙括ではないでしょうか。
名将、趙奢の息子である彼は、父を兵学論議で言い負かすほど口が達者でしたが、実際、軍を率いては無能で、秦の名将、白起率いる軍に大敗を喫します。
しかも、補給線を断たれての大敗でした。
このあたり、フォークに似ているとも言えます。
三国志の登場人物、馬謖に似ていなくもありません。
諸葛孔明の命令を無視して、布陣する場所を間違え、補給路を断たれて敗れました。
また、旧日本軍の将軍で、無謀なインパール作戦を実行させた牟田口廉也もモデルではないでしょうか。
ジャングルの中を徒歩で進むという無謀な作戦で、補給線を無視していたため、兵士の多くはマラリア死や餓死をする羽目になりました。
あと、焦土作戦に苦しみ、軍が壊滅するのはナポレオンのロシア戦線をヒントにしているかと思います。
もっとも、ナポレオンはフォーク准将などとは違い、歴史に名を残す天才ですが。

余談

石黒版銀英伝でフォーク准将の声を担当した古谷徹氏は、フォーク准将のことを「自分が今まで演じて来た役の中でも特にイヤな奴で嫌い」と発言されています。


この作品には他にも嫌われる人物が何人か登場しますが、例えばラインハルトとキルヒアイスの仲を引き裂いたオーベルシュタインは冷徹ではありましたが、私心がなく、やることは常に正しいとも言える人物でありました。
秘密警察を率いてロイエンタールをはめたラングについても、家庭では良き夫であり、親であり、さらには匿名で慈善団体に寄付をしていたという側面があります。
無能で、大損害を与えたことなど、ここまで救いようのない人物はやはりフォーク准将だけでしょう。
彼こそが「銀河一の嫌われ者」の称号に最もふさわしい人物でしょう。

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