「QED憂曇華の時」歴史マニアにおなじみのシリーズです。

その他

タイトルは「うどんげのとき」と読みます。

「憂曇華」は「優曇華」とも書くようで、その花は三千年に一度だけ咲くという伝説の植物です。

このタイトルが何を意味するかは本書を読んでみてください。

高田崇史の「QED」シリーズは、歴史マニアの方にはご存知の方も多いでしょう。

一応、話としては現代で起こる殺人事件の謎を解くわけなのですが、その殺人動機などに歴史の謎が関わっています。

私は全作読んでいますが、正直言って、殺人事件の解明より、歴史の謎を解く方にいつも関心が向かいます。

主人公は漢方薬局に勤める桑原崇(通称:タタル……「崇」という字と「祟」という字が似ているため。また奇妙な性格のキャラであるため)と、その相棒であり、別の薬局で働く、棚旗奈々のふたりとなります。

物語は主に奈々の視点から書かれています。

この作品の魅力というか、マニアが楽しむのは、タタルが語る歴史ウンチクの数々です。

この部分を楽しめないと、読むのは少し厳しいかもしれません。

今までの歴史の常識を打ち破る解釈、勝者によって作られて来た歴史をひっくり返す視点で多くが語られます。

今回は長野県の安曇野と穂高が主な舞台です。

解明される主な謎は次のとおりです。

・なぜ安曇野を「あずみの」と読むのか? 「あどの」と読むのが普通ではないのか?
・鵜飼の鵜はどうして古代から重要な鳥と見られて来たのか?
・住吉大社と宇佐神宮の関係
・九州にいた隼人は悲劇の民族?
・神功皇后と住吉大社について
・「◯◯の犬」「犬死に」というような犬が出てくる表現について
・弓削道鏡に皇位が譲られようとしたとき、どうして伊勢神宮ではなく、宇佐神宮へ伺いを立てたのか?

などなど……それ以外にもたくさんの謎がありますが、そこは読んでみて確かめてみてください。

人気シリーズなのでたくさんの巻が出ていますが、過去作を読んでいなくても十分楽しめます。

私は称徳女帝が宇佐神宮へ伺いを立てた件について、長年疑問に思っていたのですが、この作品を読んで目からウロコが落ちました。

考えてみれば、簡単なことだったのですね……

作者は他にも「神の時空」シリーズや「カンナ」シリーズなど、いろいろと歴史の謎を取り扱ったシリーズを執筆しています。

ものすごい読書量だと思うのですが、どんな勉強をしているのかといつも敬意を抱いてしまいます。

作品ひとつひとつの熱量がすごく圧倒されてしまいます。

自分も歴史好きと自称していますが、初めて聞くようなことや、そんな解釈があるのかと驚くことばかりです。

しかも、どれも説得力があり、一貫性があるので、すごいことだなと感心します。

今回、最初の方が静かな感じで、期待はずれかなと一瞬思ったのですが、中盤くらいから引き込まれて、一気に読んでしまいました。

とにかく、歴史好きの方にはぜひ読んでもらいたい作品です。

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