巨匠あだち充先生の代表作の一つである『みゆき』。
青春ラブコメの金字塔とも言える作品ですが、ラストの選択肢については評価の分かれるところではないでしょうか?
個人的にこの作品やあだち充作品の恋愛観について書かせていただきます。
なお、あくまで個人の見解であるとあらかじめお断りさせていただきます。
『みゆき』とは?
『みゆき』は1980年から1984年にかけて『少年ビッグコミック』で連載された、あだち充先生による青春ラブコメ作品です。
アニメ化や実写映画化もされています。
アニメのED曲『想い出がいっぱい』は大ヒットしました。
物語の主人公・若松真人(まさと)は、ある日突然、外国から帰国した義理の妹・若松みゆきと同居生活を始めることになります。
若松みゆきは真人の父の再婚相手の連れ子です。
つまり血のつながりのない妹ということになります。
この設定は当時斬新でした。
一方、学校には同じ名前を持つ美少女・鹿島みゆきがいて、真人は彼女に思いを寄せていました。
物語は、義理の妹と学校の憧れの美少女の間で揺れ動く真人の恋愛模様を中心に展開していきます。
ちなみに若松みゆきはショートカットで活発な少女。
対する鹿島みゆきはロングヘアーでおしとやかな感じと見事に計算された形で作り分けられています。
ふたりとも誕生日は2月9日で、血液型はAB型ということで、このあたりも設定の妙があります。
問題のラストとは?
物語の最後、主人公・真人が選ぶのは義理の妹である若松みゆきです。
若松兄妹にはサッカー日本代表に選ばれる幼馴染の沢田優一という人物がいたという設定が突然現れ、その人物がサッカー留学から帰って来るやいなや、圧倒的なスピードで若松みゆきにプロポーズし、婚約まで取り付けます。
実際、結婚式までこぎつけるのですが、真人がスピーチの際、若松みゆきが好きでたまらないことを告白することで、花嫁を奪う形となります。
「え? 鹿島みゆきはどうなるの?」と驚いた人も多いはず。
鹿島みゆきは真人と違って成績優秀で、有名大学にも行けたのに、偏差値の低い真人と同じ大学に行こうとし、しかも、その大学にさえ真人が落ちたため、一緒に浪人生にまでなるという凄まじく一途な子です。
そこまで人生を賭けた相手に捨てられてしまうなんて、なんて可哀想なのでしょう。
義理の妹である若松みゆきも成績優秀でしたが、真人と同じ高校に行きたいがために受験する高校のレベルを下げるということを一応してはいますが……
鹿島みゆきの扱いがひどくないですか?
鹿島みゆきは、才色兼備のいわゆる完璧なヒロインです。
真人も彼女に憧れて恋をしていました。
しかも、鹿島みゆき側も初めから冴えない真人のことをほのかに想っていたような都合のいい描写があります。
真人に水着を盗まれたのでビンタをしてしまうのですが、自分が悪くないのにそれを反省するような健気な子です。
物語の序盤から中盤にかけて、真人は鹿島みゆきにアプローチし続けます。
結果、ふたりは公認のカップルとなり、鹿島みゆき側もさすがに若松みゆきに対して余裕を見せるような描写もありました。
若松みゆき側も兄の幸せを願い、完璧美少女の鹿島みゆきに対してあきらめるかのような描写もありました。
鹿島みゆきは真人のお相手として、若松みゆきの結婚式にも出席しています。
まさか、直後、自分がフラれるとも知らずに。
エピローグにて、鹿島みゆきは傷心旅行で北海道へひとり旅に出ます。
そこで、若松みゆきにフラれた沢田優一と出会う描写があります。
このあたりは、作者さんもさすがに彼女が可哀想だと思った上での描写だったと思うのですが、一読者としてはなんだかご都合主義すぎないかとも思いました。
まるで、可哀想すぎるから相手を用意してやったと言わんばかりです。
確かに振られたままだと気の毒ですから、新たな相手を探すというポジティブな描写はあってもいいと思いますが、それが若松みゆきの振った相手でなくても良かったのではないかと。
それよりも、このサッカー選手の沢田優一というのが、伏線も何もなく登場した人物で、最後に美味しいところだけ持っていこうとしたところから、あまり感情移入ができない人物なんですね。
主人公たちのまわりにはふたりのみゆきを狙う男たちがたくさんいました。
彼らが選ばれるパターンはないなとは思いましたが、沢田優一よりは感情移入できました。
沢田優一がもっと早くから登場していたなら違った感想になったかもしれません。
別に若松みゆきを選んだのが悪いわけではない
若松みゆきも大変魅力的なヒロインです。
鹿島みゆきよりも感情を表に出すかわいい子です。
真人のことを想う描写もたくさんありました。
何より一緒に住んでいるという設定からしてずるいですよね。
大人になった今となっては、真人がこちらを選ぶ終わり方もわかる気がするのですが、初めて読んだローティーンの頃はわかりませんでした。
『マクロス』でいう、主人公がミンメイではなく、早瀬未沙を選んだのかというのも当時はわかりませんでした。
しかしながら、鹿島みゆきが可哀想だという気持ちは今も変わりません。
『タッチ』の和也は鹿島みゆきに似ている?
同じ作者の名作『タッチ』では、ヒロインの朝倉南は、優秀な上杉和也より、平凡な双子の兄、達也を最初から好きな描写がありました(達也も最終的には甲子園優勝投手になるのですから平凡ではないですけれど)。
和也は途中で退場するので選ぶも何もないですが、和也のポジションって鹿島みゆきと似ていませんか?
作者の得意パターンですかね?
結局は完璧なキャラよりも、良いところも悪いところもむき出しで、逆に主人公の良いところも悪いところも両方よく知っているキャラが勝つというか……
『H2』では、主人公の比呂が野球ではライバルの英雄に勝ちますが、比呂が憧れていたヒロインのひかりは英雄を選択します。
得意パターンと違うではないかと思われるかもしれませんが、ヒロインのひかりはどちらかというと比呂にとって憧れの存在で、キャラクターは鹿島みゆきに近いです。
もうひとりのヒロイン古賀春華の方が活発で比呂と色々とじゃれ合うなど、若松みゆきのキャラに近いものがあります。
やはり、勝利(?)するのはこちらのタイプなんでしょう。
まとめ・あだち充先生は見事です
ここまで色々と書いておいてなんですが、もし、鹿島みゆき側が勝利していたら、若松みゆきが可哀想だという意見や、絶対若松みゆきを選ぶべきだったという声が多数上がっていたと思います。
このあたり、完全に作者であるあだち充先生の術中にはまっているのでしょう。
お見事としか言いようがありません。
とはいえ、沢田優一と鹿島みゆきが出会うシーンだけはいらなかったかなと今も思います。
この『みゆき』という作品の唯一の問題は、沢田優一の登場が遅すぎて感情移入できないところだったということではなかったかということでしょうか。
あなたは『みゆき』のヒロイン選びに納得できますか?


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