はじめに・全裸監督とは?
「全裸監督・村西とおる伝」は本橋信宏氏の著作です。
「AVの帝王」と呼ばれる村西とおる監督の波乱万丈すぎる人生を描いたノンフィクションです。
Netfilixで制作、放送され、評判となった「全裸監督」の原作となった本でもあります。
ドラマでは山田孝之が村西とおる監督を演じて話題となりました。
なお、著者の本橋信宏氏は村西監督とは長い付き合いであるそうです。
若かりし頃は村西監督の経営する出版社で雑誌の編集長を務めたことや、村西作品のシナリオを書いたり、AV男優も務めたことがあるそうです。
そんな身近なところにいた人物が丹念に取材して書く本ですから、非常にリアリティがあり、何より濃厚です。
内容を少し紹介します
この本は2016年に書かれた作品です。
近年、ツイッターやブログなどで、「糞尿メディア」「便所紙朝日」などという単語を連発し、コロナウイルスに対する報道を批判している村西監督は出てきません。
それでも、十分濃厚な内容ではあります。
福島県いわき市の貧しい家庭に生まれてから、2016年までの村西とおる監督が描かれています。
父母の離婚を経験した話、初体験は13歳で相手は友人の妹だったという話、進駐軍の軍人にみかんの皮を投げつけられた屈辱という少年時代のエピソード。
上京して、バー「どん底」で馬車馬のように働いた話と、そのとき出会った未亡人との逢瀬で「駅弁」という体位を開発したエピソード。
英会話教材のセールスマンとしてトップ成績を取った話。
インベーダーゲームの流通を手掛け、自衛隊基地の近くに設置して大儲けした話。
それだけ儲けていたにも関わらず、「ビニ本」に出会い、やがては「裏本」を作った結果、「北大神田書店」というグループを作り上げ、これまた驚異的な売上を誇りますが、警察に摘発され、一文無しになった話……
もうこの時点で普通の人の人生を十分生きているように思いますが、これはまだ序の口です。
一時は、部下とともに二週間で一億円もの豪遊をしていた村西監督ですが、ここからAVの世界に入り、初めは酷評されながらも、斬新かつ過激な内容が徐々に話題になっていき、ついには伝説の女優、黒木香さんとの共演で大絶賛を浴びます。
儲けもそうですが、この頃の村西監督は6年間一日も休まず、仕事場で寝泊まりをして、仕事をし続けたとのことです。
付き合わされた部下たちは、鬼気迫る村西氏を怖い人だったと話し、サンドバック状態にされたスタッフもいたとか。
しかし、ここでも絶頂期を迎える村西監督ですが、アメリカで撮影していたところを逮捕され、懲役370年を求刑されるという事件が起きます。
それはなんとか凌いだものの、それからはある事件を巡ってジャニーズ事務所と対立。
さらには女優が年齢を偽ったため、再び逮捕。
気づいたときには、前科7犯、借金50億を背負う存在になっていました。
これは今でも村西とおる監督を語るときに使われる枕詞となっていますね。
資金繰りに苦しむ日々のことも書かれています。
息子が超名門の小学校に合格するというエピソードもあります。
余命一週間を告げられた話も。
本当に、何人分の人生を生きているのかと思うほどの人生です。
私的感想など
作者はプロローグで、「一体、村西とおるとは何者なのか?」と問いかけています。
その答えが読み終わったときにわかるのか、それは読んでみた人次第だと思います。
私は少しだけわかったような気がしました。
ある意味、村西とおる監督はひどい人間に見えます。
しかし、「ナイスですね」のひとことで何事も片付けてしまう不思議な魅力の持ち主でもあります。
今でも講演を開けば超満員、地上波を含めた放送局から出演依頼がひっきりなしだとか。
怖い人だったと証言する人もいますが、面白い人だったと証言する人もいます。
実に不思議な人です。
この本には当時の女優やら、スタッフやらがたくさん登場し、それぞれが当時のことを証言しています。
女優のその後も一部紹介されています。
なお、村西監督自身は自分の人生を「ラッキーな人生だった」「人生に悔いはない」と話しています。
これだけ濃い人生を送っていれば当然でしょうね。
19章構成で、最後の年表を含めて700ページもある本で、なおかつ非常に内容が濃いので、読むのには少しパワーが必要です。
700ページもありますが、それでもまだまだエピソードがあるのではないかと思わせてくれます。
なお、どうしても、卑猥なセリフが引用されていますので、読者によっては嫌悪感を持つ人もいるかもしれません。
とはいえ、読む価値のある本だと思います。
タイトルにも書きましたが、嘘のような本当の人生が描かれています。
興味を持たれた方はぜひ、手にとって読んでみてください。
Netflixで「全裸監督」のドラマを見てから読むのもいいかもしれません。
公式サイト↓
漫画版もあります。
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